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の説明が受け入れられ、現地の教育長も納得し再建が決定された。

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今回の基町高層アパートの場合も、建築の現場での施工者が、どれだけ防火・防煙区画の大切さを認識しているかにかかっている。本当に安全な建物を建設するためには、設計者、施工者を含めて安全な防煙区画の施工が可能なように施工システム全体の見直しが必要である。

 

(七)おわりに
私は、一九七二年の秋にNHKが世界の都市防災という番組をつくるのを手伝い、その一つとしてシカゴのシアーズタワーの工事現場を訪れ、セフティエンジニアのシャーマーさんに、現場でインタビューをした、その時、安全のために現場で最も大切なことは何かという質間に対して、仕上げ前の「穴埋め作業」だと力説していたことを鮮明に思い出すことができる。それに比較して日本の工事現場で「穴埋め作業」が最重要課題とされることはほとんど無い。アメリカではセフティエンジニアの資格の中に災害現場の視察の経験が重要視されているが、それは災害が、知識を知恵化する能力を持っているからで、災害現場の経験のないセフティエンジニアは有り得ないと考えられているからである。そのためかアメリカでは大きな建物火災が起こると、ほとんどの州の消防関係者が現場視察に訪れており、そのような人達の中から秀れたセフティエンジニアが生まれて来るわけである。シカゴのシアーズタワーのシャーマーさんの確認のサインは、そのフロアーの保険料率を1/4にする力を持っていた。超高層の部屋を借りるテナントにしてみれば、毎年の保険料が1/4になることは大きな魅力となる。
建築物を火災の危険から守るためには、災害現場から得られた知恵が必要であり本当の安全を生み出すためには、最も現場に近い消防官が、災害現場の意義を理厚し、本当の災害調査を行えるよう努める必要がある。
これからの消防に望まれることは、行動し考える行動的危機管理グループの養成ではなかろうか。

 

※1地震時における石油ストーブ等火器による出火機構調査・東京大字教授 高山英華、東京大学研究室 村上處直(昭和四四年三月東京都防災会議)
※2危険エネルギー横浜市(昭和四七年)
※3千日デパート火災研究調査報告審(昭和四七年一〇月)
防災都市計画研究所
MANU都市建築研究所

 

 

 

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